知能検査

WAIS-IV(知能検査)で何がわかるのか?

心理検査のイメージ画像

WAIS-IVは、成人を対象とした代表的な知能検査です。ウェクスラー式知能検査は長い歴史を持ち、教育や医療、心理支援などさまざまな場面で活用されてきました。

知能検査というと、「IQを測る検査(IQテスト)」というイメージを持たれることがあります。しかし、WAIS-IVで分かることは、IQの数値だけではありません。

WAIS-IVでは、言葉を使って考える力、目で見た情報をもとに考える力、情報を一時的に記憶して操作する力、簡単な作業を正確かつ素早く行う力など、さまざまな認知機能を評価します。

検査結果を通して、自分の得意なことや苦手なこと、認知機能の特徴を客観的に捉えることができます。また、仕事や日常生活で感じている困りごとの背景を理解し、自分に合った工夫を考えるための手がかりになることもあります。

この記事では、WAIS-IVで分かることについて解説します。

1. WAIS-IVで確認できる認知機能

WAIS-IVでは、主に以下のような指標から認知機能の特徴を確認します。

  • 全検査IQ(FSIQ)
  • 言語理解(VCI)
  • 知覚推理(PRI)
  • ワーキングメモリー(WMI)
  • 処理速度(PSI)

"全検査IQ"は、全体的な知的能力の水準を示す指標です。
一方、4つの指標を見ることで、「自分の中でどのような能力が比較的得意なのか」「どのような能力に負荷がかかりやすいのか」といった、認知機能の特徴を知ることができます。

同じような全検査IQであっても、指標ごとの得意不得意のバランスは人によって異なります。差が大きいほど、活動内容によって負担がかかりやすいため、疲れやストレスにも繋がる可能性も高いと考えられます。

4つの指標 能力の特徴 関連する行動や場面
VCI
①言語理解
言葉の意味を理解したり、言葉を使って考えたり、身につけた知識を活用したりする力を示します。
  • 言葉や文章による説明の理解
  • 言葉を使って伝えること
  • 覚えた知識を活用すること
PRI
②知覚推理
図形や視覚的な情報をもとに、物事の関係性を捉えたり、問題を解決したりする力を示します。
  • 図や視覚情報から特徴を捉えること
  • パターンや規則性を見つけること
  • 頭の中で物の大きさや奥行きをイメージすること
  • 初めてのことや応用的な事柄に対処すること
WMI
③ワーキングメモリー
一時的に情報を記憶しておく力、記憶した情報を頭の中で操作する力を示します。
  • 指示を覚えながら作業すること
  • 聞いたことをメモすること
  • 頭の中で計算すること
  • 複数の情報を保持すること
PSI
④処理速度
比較的単純な視覚情報を素早く正確に処理する力を示します。
  • 素早く行動・判断すること
  • 手作業を速やかに行うこと
  • 単純な作業をテキパキと進めること

2. 検査結果から具体的に分かること

WAIS-IVでは、全検査IQだけを見るのではなく、4つの指標のバランスも重要です。

【指標のアンバランス例】

  • 言語理解は比較的高い
  • 処理速度は比較的低い

このような場合、言葉を使って理解したり考えたりすることに比べて、時間制限のある単純な作業などでは負荷を感じやすい可能性が考えられます。

そのため、「説明を理解することはできるのに、実際の作業になると時間がかかる」といった本人が感じている困りごとについて、その背景を考える手がかりになることがあります。

ただし、WAIS-IVの結果だけから実際の生活上の困りごとを断定することはできません。
生活環境、仕事内容、経験、性格、体調など、さまざまな要因と合わせて考えることが重要です。

3. 困りごとの背景を理解する手がかりになる

仕事や日常生活で感じている困りごとには、認知機能の特徴が関係している場合があります。

電話や複数のタスクを同時進行で進めることが苦手な場合

仕事の苦手具体的イメージ
WAIS-Ⅳ検査結果

ワーキングメモリー(WMI)が低いが、処理速度(PSI)が高い

→ 複数の情報を同時に保持して操作するのは難しい反面、ひとつのことに集中して処理を行うことには得意な傾向がある。

具体的な工夫の例
  • タスクは同時に並行させず、一つ一つ順を追って行う
  • 作業の手順をあらかじめ決めておき、手順を目でいつでも確認できるように手順書やメモを用意しておく

このように、WAIS-IVの指標の結果から認知機能の特徴を整理することで、「なぜ自分はこのような場面で困りやすいのか」の背景が見え、自分に合った環境調整や工夫を具体的に検討できるようになります。

4. WAIS-IVだけで診断はできない

WAIS-IVは、認知機能や知的能力の特徴を評価する心理検査です。
WAIS-IVを受けただけで、発達障害や精神疾患などの診断が決まるわけではありません。

医療機関で診断を行う場合も、検査結果だけではなく、診察や面接、これまでの生活歴、現在の困りごとなど、さまざまな情報を総合して判断します。

そのため、WAIS-IVは「診断をつけるためだけの検査」ではなく、自分の認知機能の特徴を理解するための検査として活用することもできます。

5. どこで受けることができるのか

WAIS-IVは、検査を実施している以下のような機関で受けられる場合があります。

  • 精神科・心療内科などの医療機関
  • 大学の相談室・心理相談機関
  • 民間の心理相談機関
  • 心理検査を専門的に実施している機関

ただし、すべての精神科や心療内科、相談機関でWAIS-IVを実施しているわけではありません。
また、医療機関の場合は、現在通院している患者を対象としているなど、受検できる人に条件が設けられていることもあります。

そのため、受検を希望する場合は、各機関のホームページなどで「WAIS-IVを実施しているか」「誰が受検できるか」「費用はいくらか」などを事前に確認することが大切です。

6. まとめ

WAIS-IVでは、単にIQの数値を測定するだけではなく、以下のような特徴やバランスを把握することができます。

  • 全体的な知的能力の水準
  • 言語理解の特徴
  • 視覚的な情報をもとに考える力の特徴
  • ワーキングメモリーの特徴
  • 情報を処理する速さの特徴
  • 認知機能の得意・不得意のバランス

そして、検査結果と日常生活や仕事での様子を照らし合わせることで、

  • 「自分はどのようなことが得意なのか」
  • 「どのような場面で負荷がかかりやすいのか」
  • 「どのような工夫をすると取り組みやすくなるのか」

を考える手がかりを得ることができます。

知能検査は、単に「IQが高い・低い」を知るためだけのものではありません。
自分自身の認知機能の特徴を理解し、これからの働き方や生活を考えるための一つの手がかりとなる検査です。